Vanishing  Twin

Written  by  マドカ

 

もう1人の俺。

 

「ヒト」の姿をしたモノ。

それは「葦原 涼」という名を持っている。

 

もう1人の俺。

 

それは「「ヒト」ではない。

そして、それは「ギルス」という名を持っていた。

 

どちらも俺。

どちらも自分。

 

昔、身体は、2つに分かれていた。

「葦原 涼」と「ギルス」

異なる身体に、異なる魂。

 

ギルスは、ずっと涼が欲しくてたまらなかった。

孤独を癒してくれるのは、涼だけだと思っていたから。

だが、涼はギルスを拒んだ。

 

『お前は俺じゃない』

『俺は俺だ』と。

 

ヒトでなければ、ダメなのか。

ヒトであれば受け入れてもらえるのか。

強い力を誇示すれば、認めてくれるのか。

 

ならばー。

 

俺が、「葦原 涼」になってやる。

すべて取り込んでしまえば、涼は俺を拒めない。

 

そして、ギルスは「涼」を喰らった。

 

滴る血も

若い肉も。

すべて。

 

うまかった。

幸福だった。

だが、その身の内に、涼を取り込んだ瞬間から、

ギルスの意識は消えはじめていく。

 

“なんだ、この眠気は”

“俺が消えていく?!”

“よせ!やめろっ!!”

 

「!!!!!!」

断末魔の叫びにも似た咆哮を残し、ギルスは倒れた。

そして、ギルスの中で何かが目覚める。

“…とくん…とくん…”

一度止まった鼓動は、再び、ゆっくりと語りはじめる。

その身は「葦原 涼」であり、「ギルス」でもあるけれど、心は違うのだと。

 

心は「葦原 涼」そのヒト。

 

2002.06.29 up

続編を読みたい方は→「ダブルなカンケイ」

 

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